現代では多様な働き方が推進され、女性のライフスタイルもますます多様化しています。女性の社会進出が進み、その活躍事例も増えていますが、出産や育児などのライフイベントを考慮すると、「キャリアプランの立案」が非常に重要です。この記事では、働く女性が理想のキャリアプランを実現するためにはどのような手順が効果的なのか、将来に対する不安や理想にどう向き合うべきかについてまとめてみました。
出産・育児が女性のキャリアアップを妨げている?
女性がキャリアを考える際、特に悩みの原因となるのは出産や育児に関することでしょう。出産や育児のために離職したり、やりたい仕事を諦めたりする女性が多いのも実情です。内閣府男女共同参画局が公表している「『第1子出産前後の女性の継続就業率』及び出産・育児と女性の就業状況について」(平成30年11月)によれば、第1子出産を機に離職する女性の割合は46.9%に上ります。子どもを持つ女性のうち、約半数が出産を機に退職していることが明らかになっています。
管理職に占める女性の割合はまだまだ低い現状
内閣府男女共同参画局の「男女共同参画白書 令和2年版」によれば、常用労働者100人以上を雇用する企業において、役職者の中での女性の割合は令和元年時点で係長級が18.9%、課長級が11.4%、部長級が6.9%と報告されています。このデータからも明らかなように、管理職における女性の割合はまだまだ低い状況が続いています。
更に、他国との比較からも、管理的職業に従事する女性の割合が14.8%であることが示されています。この数字は極めて低い水準であり、働く女性が管理職に進むことの難しさを示唆しています。出産や育児がキャリアアップへの障害となるケースが依然として多く見受けられることが、この状況の背後にある現実であると言えるでしょう。
女性の活躍を後押しする流れも
確かに、現在では女性がライフイベントによって離職するケースが一般的ですが、将来的には働く女性が出産や育児といったイベントとの両立を図りながらも、キャリアアップを望む環境が整備されていく可能性があります。
例えば、「女性活躍推進法」がその一環として働く女性を支援する法律として平成27年に成立しました。この法律により、国や自治体、企業の事業主は女性の活躍状況や課題、そして今後の目標・計画を公表することが求められます。当初は301人以上の事業主に適用されていましたが、令和元年の法改正により、令和4年4月1日からは101人以上の事業主にも適用されるようになりました。これにより、中小規模の企業も女性の活躍を促進するための具体的な取り組みを進めることが期待され、女性が働きやすい環境が広がる可能性があります。
女性活躍推進法に関する詳細な情報は、厚生労働省の女性活躍推進法特集ページで確認できます。
自分らしいキャリアプランを考える重要性
確かに、政府の取り組みや社会の変化によって、働く女性がキャリアアップを諦める必要のある環境が改善される方向に進んでいることが期待されています。これまでのような制約が少なくなり、働く女性が様々な働き方やライフスタイルに合わせて自分らしいキャリアプランを築くことができるようになっています。
一方で、理想のキャリアプランは人それぞれ異なります。ワークライフバランスを大切にする人、キャリアアップを追求する人、自分のスキルを生かして独立する人など、多様な働き方やライフスタイルが尊重される時代です。在宅勤務、フリーランス、副業などの選択肢も広がり、個々の価値観やライフスタイルに合わせて柔軟な働き方が求められています。
キャリアプランを具体的に考えることは、将来の目標を定め、それに向けての行動計画を策定する重要なステップです。自分がどうなりたいかを明確にし、そのために必要なスキルや経験を積むことで、より充実したキャリアを築くことができるでしょう。
出産・育児と並行して理想のキャリアを形成する方法
上述の通り出産・育児と並行してキャリアアップを目指したい人や、出産後は育児や家庭を重視して働きたい人など、希望する人生、働き方は人それぞれです。ここからは、出産・育児と並行しながらキャリアを形成する方法を紹介します。自分の理想像を考えながら参考にしてみてください。
産休・育休期間で今までに培った経験やスキルを強化する
育児の合間に、自身の職種の最新情報をネットやSNSでキャッチアップすることや、書籍を読んでスキルを磨くことは、復職時に仕事にスムーズに適応するのに役立ちます。また、時間があれば復職前に資格取得の勉強を進めることも有益です。資格は自分のスキルの証明となり、休職中に積極的に努力していたことをアピールできます。ただし、多忙な育児中にやみくもに資格取得だけに焦点を当てるのではなく、今後のキャリアに合った資格を選び、少ない時間を有効に活用することが重要です。
復職の際におすすめの資格例を職種別にご紹介
事務関連
日商簿記検定 (3級・2級) | 日々の経営活動を記録・計算・整理して、経営成績と財政状態を明らかにする技能。経理スキルだけでなく、営業や管理部門に必要な知識として評価する企業が増えています。 |
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医療事務検定 | 医療事務全般の基本的な知識と技術が問われます。医療事務は資格がなくても働ける職種である分、資格を持つことで知識や意欲のアピールにつながり、即戦力として活躍できるでしょう。 |
Web・IT関連
ウェブデザイン技能検定(3級・2級) | ウェブデザインに関する知識・技能、実務能力等が問われる検定試験。合格すると「ウェブデザイン技能士」として認められ、ウェブ業界での転職に有利です。 |
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ITパスポート試験 | ITに関する基礎的な知識を証明できる国家試験。IT企業だけでなく、あらゆる業種・職種で有利に働きます。ITを正しく理解し、効果的に業務にITを利活用できる能力のアピールにつながります。 |
金融・証券・保険関連
ファイナンシャル・プランニング技能士(3級・2級) | 資産に応じた貯蓄・投資等のプラン立案・相談の技能を認定する資格。金融・証券・保険会社での勤務に活かせます。年金、保険について詳しくなるため、キャリアプラン計画の際にも役立ちます。 |
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マネジメントスキルを身につける
冒頭で示した通り、管理職における女性の割合はまだまだ低い水準にあります。しかし、政府の改革により、今後は「復職後もキャリアアップを目指しやすくなる」制度の導入・改善が進められることが期待されます。管理職を目指す方は、休職期間中にマネジメントスキルの向上を視野に入れることも一つのアプローチです。
管理職に必要なマネジメントスキルとしては、「メンバーにわかりやすく情報を伝達するコミュニケーション能力」「メンバーの業務内容やコンディション・スケジュールを把握する管理力」「メンバーの意見に耳を傾けるヒアリング力」などが挙げられます。
これらのスキルはすぐに習得できるものではありませんが、休職期間中には必要な知識のインプットが可能です。具体的な方法としては、マネジメントに関する書籍の読書やセミナー参加が考えられます。ただし、これらの知識は実務においては状況によって柔軟に適用する必要があります。休職期間中には基礎的な知識を身につけつつ、復職後に実際の業務経験を通じてスキルを磨くことが重要です。復職後には、会議の進行や新人・アルバイトスタッフの育成など、具体的な業務を通じてマネジメントスキルを向上させることを考えましょう。
育児休暇・時短勤務など会社の制度を利用する
在籍している会社が育児休暇、時短勤務、フレックスタイム制、リモートワークなど柔軟な働き方に対応している場合は、これらの制度を積極的に活用することが重要です。ただし、各企業ごとに制度の運用ルールが異なることがあるため、利用する前に詳細を確認しておくことが良いでしょう。
もし、現在の職場が柔軟な働き方に対応していないか、制度を利用しにくい場合は、理解のある職場への転職を検討することも一つの選択肢です。転職を検討する際には、求人情報や企業の公式サイトを確認し、柔軟な働き方の制度が導入されているかどうかをチェックしましょう。また、口コミサイトや転職エージェントを通じて、「その制度がどのくらい実際に活用されているのか」を確認することも大切です。さらに、転職を検討している企業の社員に直接ヒアリングすることで、より詳細な情報を得ることができます。
家事・育児を短縮できる方法を考えてみる
まず、パートナーや身近な人と協力し、家事や育児の分担について相談することが大切です。共働きや子育て中の場合、パートナーとの連携は非常に重要であり、お互いが納得できる形での分担を見つけることがポイントです。その上で、家事や育児にかかる時間を効率的に短縮し、仕事に充てる時間を確保する方法も考えましょう。
時短家電を活用することも一つの手段です。自動調理鍋や食器洗い乾燥機、ロボット掃除機などを導入することで、日常の家事を効率的に進めることができます。また、最近ではフードデリバリーサービスや家事代行サービス、ベビーシッターなど、外部のサポートを利用することも一つの手段です。これにより、人手を借りて家事や育児の負担を軽減し、自分の仕事や時間に集中できます。
ただし、これらのサービスを利用する際には一定の費用がかかりますので、支出に注意が必要です。必要なときだけ利用するなど、工夫してコストを管理することも重要です。行政やNPO法人が提供するリーズナブルなサービスも存在するため、公的な支援も積極的に探してみると良いでしょう。また、同じく子育て中の親とのネットワークを築くことも、情報交換や支え合いの面で有益です。
働きやすい雇用形態に切り替えてみる
確かに、長時間の拘束は家事や育児に影響を及ぼす可能性があります。そのため、柔軟な働き方への切り替えを検討することは重要です。まずは、パートナーや周囲の人と協力し、時短勤務に移行することで仕事と生活のバランスをとりやすくすることができます。時短勤務が難しい場合は、契約社員やパート、業務委託など、時間の融通が利く雇用形態への変更も検討の余地があります。
ただし、雇用形態の変更にはメリットとデメリットがあります。雇用形態の変更により、経済的な影響が生じる可能性があります。収入面や福利厚生の変化を検討しつつ、自身のキャリアプランや生活スタイルに合った雇用形態を選択することが重要です。また、時短勤務での長期間過ごすことが、昇進や昇給の機会を逃す可能性がある「マミートラック」に陥るリスクもあるため、慎重に検討することが必要です。