転職活動を進める中で、「市場価値」という言葉が頻繁に登場します。一般的な表現ではありますが、市場価値が具体的に何を指すのか、自身の市場価値を向上させるためにはどのような手段があるのか、理解が追いつかない方もいるでしょう。
本記事では、市場価値の定義について詳しく解説し、個々の市場価値を評価する方法や向上させるための具体的な手法に焦点を当てます。今後のキャリア形成に向けての参考となるでしょう。
市場価値とは
転職や就職において使用される「市場価値」とは、文字通り「市場における価値」を指す表現です。この市場価値は、企業が求めるニーズ(需要)と求職者が有する能力(供給)の相互関係によって形成されます。企業が希望するスキル、経験、実績に対して、それらを具備する求職者が少ない場合、企業の需要に対する供給が不足する状態が生まれ、結果として市場価値が高まります。言い換えれば、市場価値が高いほど、多くの企業が求める価値ある人材として位置づけられることを意味します。
それでは、市場価値がどのような要素によって形成されるのか、以下で具体的に探っていきましょう。
市場価値を構成する要素
市場価値の構成要素として、主に以下の6点が挙げられます。
- 実務実績
- 資格
- ヒューマンスキル(対人関係能力)
- マネジメントスキル
- 論理的思考力
- 問題解決能力
この中でも、実務実績は市場価値を形成する上で特に重要な要素です。特に同じ業界や職種への転職の場合、その業界や職種での経験年数や実務内容が非常に重要視されます。実績があることで、具体的に何ができる人物なのかが明確になりやすいからです。
また、専門職の例として、不動産営業やITエンジニアなどが挙げられます。これらの職種では、保有している資格の種類によっても市場価値が変動します。不動産業界では、「宅地建物取引士(宅建)」を有することが重要であり、エンジニアの場合は保有している資格によって業務のレベルが評価されます。
ただし、市場価値は1つの要素だけでなく、複数の要素の組み合わせによって高められます。例えば、実務実績が豊富でマネジメント経験もある場合、管理職ポジションでの採用が期待されます。逆に、資格はあるがヒューマンスキルが不足している場合、市場価値が低下することもあります。突出した要素だけでなく、バランスが重要であることを理解することが肝要です。
市場価値の高い人と低い人の特徴
市場価値の高い人の特徴
市場価値の高い人の特徴として、以下の4つが挙げられます。
- 常に学び続ける姿勢 最新の技術や知識を積極的に追求し、知的好奇心や探求心を持つ人は市場価値を高めやすいです。情報収集や学びの継続により、自らの意見や考察を深め、論理的思考力や問題解決能力を向上させることが可能です。企業が求める人物像として、世の中のトレンドや経済動向に積極的に学ぶ姿勢は重要視されます。
- チームワークを重視 仕事において一人で行うことは少なく、組織全体で業務を進める必要があります。対人関係能力が高く、チームワークを大切にできる人は様々な企業や職種で評価されます。個人の力だけでなく、協力して業務を進める能力も市場価値の向上に寄与します。
- 専門性を持つ 希少性のある専門スキルや、企業が需要とするスキルを持つ人材は市場価値が高まります。専門職での経験や、証明可能な資格を有することは、自分が担当できる業務の範囲を広げる
- マネジメント経験がある個人の能力だけでなく、他者を育てたり管理したりする力がある人は、市場価値がより高いと見なされます。なぜなら、仕事は基本的に一人で行うものではなく、それぞれが役割分担をし、連携して業務を進める必要があります。このとき、的確な指示やリーダーシップができる人物は業務が円滑に進むでしょう。そのため、マネジメント経験や実績がある人は、より高い評価を受ける傾向があります。
市場価値の低い人の特徴
市場価値が低い人の特徴として、以下の4つが挙げられます。
- 言われたことだけしかできない 仕事で指示されたことをこなすことは重要ですが、それだけでは市場価値が高く評価されにくいです。自己主張や主体的なアクションが少ないと、根本的な問題解決能力が十分に養われません。問題が発生した際に主体的に対処できる能力が求められるため、自分なりのアイディアや付加価値を提供できることが重要です。
- 視野が狭い 視野が狭い人も市場価値が低くなりがちです。広い視野がなければ、協力関係が乱れたり、情報共有が不足してトラブルが生じる可能性があります。ビジネスの現場では広い視野で業務に取り組むことが求められるため、自分の役割だけでなく全体の視点を持つことが重要です。
- スキルや実務経験が少ない 多岐にわたるスキルを持つことは市場価値を高めますが、特定のスキルや実務経験が乏しい場合、市場価値は低くなります。複数の職種での浅い経験や、必要な資格を有していない場合、市場での競争力が減少する可能性があります。
- 思考が浅い 思考が浅いと、ビジネスの進行において重要なリスクを見逃す可能性が高まります。仕事を進める際にはスピードが求められることもありますが、深い洞察力や考察を欠くと予測不可能なトラブルが生じる可能性があります。思慮深い考え方や戦略的な視点が求められます。
市場価値を高める方法3選
市場価値は、「実務実績」「資格」「ヒューマンスキル(対人関係能力)」「マネジメントスキル」「論理的思考」「問題解決能力」といった要素をバランスよく備えることで高まります。このため、経験やスキルの積み重ねが評価され、即座に向上するものではありません。では、日頃からどのような取り組みが市場価値向上に繋がるのでしょうか。以下に、市場価値を効果的に高める3つの方法を紹介します。
現職でスキルと経験を向上させる
現職での経験やスキル向上が市場価値を高める手段の一つです。仕事において単なる業務経験だけでなく、周囲との関係構築や論理的思考、問題解決能力の向上にも注力しましょう。リーダーシップを発揮し、根本的な課題に挑戦する姿勢が重要です。また、経験年数を積むことでマネジメント経験も得られます。
業績を上げることでアピールポイントを増やす
仕事で成果を挙げ、企業に対するアピールポイントを増やすことも重要です。個々のスキルが高いだけでなく、それを活かして組織に貢献できることが求められます。成果だけでなく、その背後にある理由やプロセスを明確にし、自分の言葉で説明できるようにすることが効果的です。
需要のある資格を取得する(一部の職種に限る)
需要の高い資格の取得は市場価値向上に寄与しますが、必要性を見極めて取得することが重要です。専門職や特殊な職種において、資格が業務遂行に必要な場合に有用です。むやみな資格取得ではなく、自身のキャリアプランに適した資格を選定しましょう。
まとめ
転職を検討する際、自身の市場価値を正確に把握することは極めて重要です。これにより、現在の職場が提供している給与や待遇が適切であるか、または転職が適しているかを判断できます。また、市場価値を向上させる方法を理解することは、現職においてモチベーションを向上させる手段ともなります。モチベーションが高まれば、現職におけるキャリアアップだけでなく、より魅力的な企業への転職機会も増えるでしょう。自身の市場価値を的確に把握し、今後の成長に向けて必要なスキルや経験を積極的に伸ばしていくことが重要です。