自己都合と会社都合の退職には、法的な違いや待遇面での違いが存在します。以下に、それぞれの特徴とメリット・デメリットを紹介します。
そもそも自己都合退職って何なの？
自己都合退職とは、どのような辞め方になるのか把握しておきたい人もいるでしょう。自己都合退職は名前の通り、労働者本人の事情で退職することです。ただ、自己都合の内容や会社都合との違いについてはしっかり理解しておく必要があります。自己都合退職の内容について紹介しましょう。
自己都合退職とは労働者自身の都合による退職
正確です。自己都合退職は、従業員の都合によって労働契約が終了するケースを指します。その都合にはさまざまな理由があり、結婚、出産、健康上の理由、家庭の事情、転居などが挙げられます。また、会社の規則違反や法令に違反した場合、懲戒解雇となることがあり、これも自己都合退職に分類されることがあります。
以下に、自己都合退職の主なケースをいくつか挙げてみましょう。
- 結婚や出産:
- 結婚や出産を機に、専業主婦となるために仕事を辞めるケースがあります。
- 健康上の理由:
- 病気や急な体調不良により、仕事を続けることが難しくなり、自己都合で退職するケースがあります。
- 家庭の事情:
- 家族の介護が必要になり、仕事を辞めることが避けられない場合があります。
- 転居:
- 転居に伴って通勤が難しくなり、現在の仕事を続けることが難しい場合があります。
- 会社規則違反や法令違反:
- 会社の規則や法令に違反した結果、懲戒解雇される場合があります。この場合も自己都合であることがあります。
これらの場合、退職理由や退職日の調整、退職手続きなどについては、雇用契約や会社の就業規則に基づいて、慎重に取り決める必要があります。
会社都合退職との違い
失業保険の給付において、会社都合退職と自己都合退職ではいくつか違いがあります。
- 給付の対象:
- 会社都合退職: 通常は給付の対象となります。ただし、解雇事由によっては一定期間の給付停止がある場合があります。
- 自己都合退職: 通常も給付の対象ですが、自ら辞職した場合は一定期間の給付停止期間が設けられることがあります。
- 給付の期間:
- 会社都合退職: 一般的には給付期間が制限されず、一定期間（最大3年程度）受給可能です。
- 自己都合退職: 一定期間の給付停止期間があります。ただし、その後の再雇用等の条件次第で再び受給可能となる場合があります。
- 給付の要件:
- 会社都合退職: 解雇が正当な理由に基づく場合、給付が認められます。
- 自己都合退職: 本人都合であることが一般的に認められ、給付が停止される期間が設けられることがあります。
ただし、具体的な条件や給付の詳細は労働基準法や失業保険法、雇用保険の規定に基づいており、国や地域によって異なることがあります。退職を検討する際には、詳細な条件を確認することが重要です。
自己都合退職するメリットとデメリット
自分の状況の変化により、仕事を続けられなくなったなら自己都合退職する必要も生じるでしょう。ただ、自己都合退職する際はどのようなメリットやデメリットがあるのか把握しておくのも大事です。それぞれの内容について紹介しましょう。
自己都合退職のメリット
自分の環境を改善できる
自己都合退職のメリットには、環境の改善や自己成長のためのステップアップが挙げられます。以下に詳しく説明します。
- 環境の改善:
- 結婚や出産、家族の状況の変化など、ライフスタイルに合わせて働くことができます。自己都合退職ならば、急な変化にも柔軟に対応でき、新しいライフイベントに合わせた働き方を選ぶことができます。
- キャリアアップや独立へのステップアップ:
- 職務やスキルの向上を目指して転職し、新しいキャリアに挑戦することができます。自分の将来の目標に向けてステップアップするために、自己都合退職は有益な手段となります。また、独立を考える場合も、自己都合退職を機に起業やフリーランス活動を始めることができます。
- 自分のタイミングでの退職:
- 会社都合ではなく、自分の意志で退職できるため、仕事に対するモチベーションを保ちやすいです。新しい挑戦に向けての準備を整え、自分のタイミングで新たな一歩を踏み出すことが可能です。
ただし、自己都合退職には収入の面での不安定さや、失業保険の給付が一定期間停止される可能性などもあるため、慎重な計画とリスク管理が求められます。将来の計画や目標に基づいて、検討することが大切です。
履歴書の退職理由を「一身上の都合」と記載するだけで良い
自己都合退職の理由を履歴書に記載する際、簡潔で誠実な表現が重要です。以下に、具体的なアプローチと留意点を挙げてみましょう。
- 簡潔な表現:
- 「一身上の都合」は確かに簡潔な表現ですが、その他の情報も考慮しながら簡潔かつ明確に理由を表現しましょう。例えば、「家庭の事情により転居が必要になりました」といった形で、一般的な表現を選ぶことができます。
- ポジティブな言葉選び:
- 理由に関してネガティブな表現は避け、ポジティブな言葉で自分の選択を説明しましょう。例えば、「新しい環境でスキルを磨き、より成長できる機会を求めて転職を決意しました」といったスタンスを示すことで、プラスの印象を与えることができます。
- 期間が短い場合の説明:
- 在籍期間が短い場合は、特に理由を尋ねられる可能性が高まります。この場合も誠実に対応し、前向きな理由や学びがあったことを伝えるように心がけましょう。
- 相談やアドバイスの受け入れ:
- 転職エージェントやキャリアカウンセラーに相談し、具体的な履歴書の記載方法やアプローチについてアドバイスを受けることもおすすめです。専門家の視点からのアドバイスは、信頼性のある情報となります。
自分の状況や経歴に合わせて、誠実かつプロフェッショナルな印象を与えるような履歴書の記載を心がけることが、転職活動の成功に繋がります。
自己都合退職のデメリット
失業保険保険の給付金を受け取るまで期間が長い
自己都合退職後の失業保険の手続きには確かに一定の期間がかかります。以下に、失業保険の手続きに関する詳細と留意点をまとめてみます。
- ハローワークへの登録:
- 失業手当を受けるためには、まずハローワークに登録する必要があります。失業の届け出と登録を同時に行います。
- 雇用保険被保険者資格期間:
- 失業手当を受給するためには、雇用保険被保険者資格期間（簡単に言えば保険料を支払っていた期間）が必要です。最近の変更により、最後の保険料支払いから1年以内に離職した場合に限り、被保険者資格期間が認められるようになりました。
- 待機日:
- 失業手当の支給開始までには、「待機日」と呼ばれる7日分の給付があります。これは、失業者が再就職活動に専念できるように、最初の7日間の生活を支援するものです。
- 手続きにかかる時間:
- ハローワークへの登録から失業手当の支給開始まで、通常では最短でも数週間から1ヶ月以上かかります。手続きが滞る場合や審査が必要な場合には、もう少し時間がかかることもあります。
- 生活の維持:
- 失業手当が支給されるまでの期間、自己都合退職者は無収入期間が続く可能性があります。生活資金の確保や急な支出に備え、適切な計画を立てることが重要です。
失業手当の支給までの期間は個々の状況によって異なりますので、ハローワークや労働基準監督署などの相談窓口で具体的な情報を得ることがおすすめです。
退職金が減額されるケースが多い
自己都合退職において、退職金が減額されるケースやその他の注意点について確認しておくことは重要です。以下に、自己都合退職に伴う退職金に関するポイントをまとめてみます。
- 勤続年数や規定による退職金:
- 企業によっては、一定期間以上勤務した従業員に対して退職金を支給する場合があります。しかし、勤続年数や規定によりその支給額が決まります。短期間の勤務だと退職金が少ない可能性があります。
- 自己都合退職による減額の可能性:
- 一部の企業では、自己都合退職の場合、退職金が基本的な規定よりも減額されることがあります。これは、企業が従業員による自己都合の場合、慰労の意味合いで支給されることが一般的であるためです。
- 予定が未定の場合の注意:
- 次の仕事が未定の状態で自己都合退職を考える場合、退職金だけでなく失業保険や生計の確保も含めて慎重に計画をたてる必要があります。貯金や生活の維持に関する具体的な計画が重要です。
- 雇用契約書や企業の規定の確認:
- 企業ごとに退職金に関する雇用契約書や規定が異なるため、自己都合退職を検討する際には、雇用契約書や企業の規程を確認し、具体的な条件や影響を理解することが重要です。
自己都合退職においては、会社ごとのルールや条件を事前に理解し、慎重な計画をたてることが安心して移行するために役立ちます。
会社都合退職するメリットとデメリット
会社都合で退職する際も、メリットとデメリットがあります。どのようなメリットやデメリットがあるのか把握しておくと万が一の際に備えて準備ができます。それぞれの内容を紹介しましょう。
会社都合退職のメリット
失業保険の受給が早く、金額が大きい
会社都合退職の場合、失業保険の受給に関するポイントやメリットについて確認しておくことが重要です。以下に、会社都合退職に伴う失業保険に関する情報をまとめてみます。
- 受給開始日数の早さ:
- 会社都合退職の場合、失業保険の受給開始日数が比較的早く、ハローワークに申請してから7日間の待機期間があれば受給が始まります。これにより、急な収入の喪失にも柔軟に対応できます。
- 受給期間と給付額の大きさ:
- 会社都合退職の場合、失業保険の給付期間が通常1年以上であり、その間の給付額も前職の給与に応じて一定の割合で支給されます。自己都合退職と比較して給付期間や給付額が大きいため、次の仕事を見つけるまでの生計が安定しやすいです。
- 次の職場を探す余裕:
- 失業保険の給付期間が1年以上あるため、会社都合退職者は比較的余裕を持って次の職場を探すことができます。これにより、自己都合退職者よりもゆとりをもって転職活動を進めることができます。
- 生活面での安心感:
- 失業保険が支給されることで、急な生活の変化に対する不安を軽減できます。家族がいる場合も、給付額が安定しているため生活面での安心感があります。
会社都合退職者にとっては、失業保険の制度がサポートとなり、比較的順調に次のステップへ進むことが期待できます。ただし、具体的な条件や金額は雇用契約や法令に基づいて変動するため、個別の事情に合わせて確認することが重要です。
退職金が上乗せされる可能性もある
会社都合退職に伴う退職金の増額や生活面でのメリットについての補足情報を追加いたします。
- 退職金の上乗せ:
- 会社都合退職の場合、従業員に対して様々な理由から雇用関係を解消することが求められます。このとき、企業は円満な解雇を促進するために、法的な義務以上に退職金を上乗せすることがあります。これにより、従業員が納得しやすくなり、トラブルを回避する意図があります。
- 生活面での安定感:
- 退職金の上乗せや失業保険の給付により、会社都合退職者は生計の維持が比較的安定しやすくなります。これにより、次の仕事を探す際に焦る必要がなく、より適切な求人やキャリアアップの機会を検討できます。
- 国民保険の軽減措置:
- 退職後、自ら国民保険の保険料を負担する必要がありますが、会社都合退職の場合、一定の条件を満たすと保険料の軽減措置がある場合があります。これにより、生活負担を抑えることが可能です。
- 再就職活動の余裕:
- 退職金や失業保険の給付により、生活が安定している状態で再就職活動に臨むことができます。これは、仕事選びにおいて焦りを感じず、将来的なキャリアの方向性を検討する時間を確保できる点でメリットとなります。
会社都合退職は、解雇の形態であるため、企業は法的な要件をクリアしつつ円滑な手続きを進めることが求められます。これにより、従業員にとっても相対的にメリットが生じやすくなります。
会社都合退職のデメリット
急に仕事を失うことになる
会社都合対策である会社都合退職は、急な変化や精神的なダメージが生じる可能性があることを考慮することは重要です。以下は、その際に留意すべき点についての情報です。
- 精神的な影響:
- 急な会社都合退職は、従業員にとって予測不可能な出来事であり、これにより職場への愛着ややりがいを感じていた人々にとっては精神的なダメージを受ける可能性があります。このような状況では、自己評価やキャリアの方向性に対する不安やストレスが高まることがあります。
- 再就職活動の難しさ:
- 同じ職場の条件や環境での再就職が難しい場合があります。特に、同じ業界や職種であっても、経験やスキルの違い、求められるポジションの違いなどが影響して、採用されるまでの時間がかかる可能性があります。
- 転職支援機関の利用:
- 転職活動をサポートしてくれる転職支援機関やキャリアコンサルタントの利用を検討することが有益です。これにより、自己分析やスキルの再評価、適切な求人検索などがサポートされ、再就職活動が効果的に進められるでしょう。
- 新たなキャリアの検討:
- 今後のキャリアについても見直しを行うことが重要です。異業種への転職やスキルの習得など、新たなキャリアの選択肢を検討することで、新しい職場での成功への可能性を広げることができます。
- 心のケア:
- 仕事の喪失はストレスや不安を引き起こす可能性があります。心のケアに注意を払い、必要であれば専門のカウンセリングやサポートを受けることが重要です。
会社都合退職後の状況においては、精神的な側面だけでなく、再就職活動やキャリアの見直しについても検討することが不可欠です。個別の状況に応じて、適切なサポートや対策を講じることが重要です。
転職の面接で質問される機会が多いケースもある
会社都合退職から次の仕事を探す際には、面接や履歴書の記載において質問が増える可能性があります。以下は、その際に考慮すべきポイントと対策についての情報です。
- 解雇された理由の明確な説明:
- 解雇された場合、その理由を明確に説明することが求められるでしょう。トラブルや問題があった場合は、率直に説明し、それに関連する経験から学び得たことや、今後の改善点についても考えておくと良いです。
- 前職での経験やスキルのポジティブな強調:
- 過去の雇用経歴においては、前職で培った経験やスキルを強調し、ポジティブな視点で語ることが重要です。前職の終了があるとはいえ、それを活かして次のキャリアにどのように貢献できるかをアピールすることが求められます。
- 学びや成長への意欲:
- 過去の経験から学び、成長する意欲を示すことが重要です。前職の終了による挑戦や試練を通じて、自らを向上させるための努力を伝えることで、ポジティブな印象を与えることができます。
- 自分の価値観やキャリアゴールの共有:
- 面接では自分の価値観やキャリアゴールについても共有することが求められます。前職を終えた背景や次にどのようなキャリアを築いていきたいかを伝え、将来の展望を示すことが有益です。
- 参考人の選定:
- 前職の解雇に関連する情報が問われる場合、参考人の選定が重要です。信頼性のある参考人を用意し、面接官に適切な情報を提供できるよう心掛けましょう。
注意深く対策を講じ、前職終了に関連する質問に対して準備を行うことで、信頼性を高め、次のキャリアに向けて成功裡に転職活動を進めることができます。
まとめ
自己都合退職と会社都合退職の内容について紹介してきました。2種類の退職は、どちらもメリットとデメリットがあるので、慎重に検討する必要があります。ポイントを押さえて退職するとリスクを軽減できるので、自己都合退職を考えている人は慎重に計画してください。
